[長野大学プレスリリース] 淡水生物学研究所の井水でPFAS(有機フッ素化合物)調査を行い、下限値未満(<5ng/L)であるがわかりました
有機フッ素化合物PFAS、すなわちパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(Per- and Polyfluoroalkyl Substances、PFAS)は、分解が難しい性質を持ち環境中に長く残留すること、およびヒトの健康と環境への影響に関するリスクが知られていることから、汚染源での暴露への懸念が深まっています。研究によれば、人への影響としては、免疫システムの能力の低下・コレステロール値の上昇・肝酵素の変化・乳児の出生体重のわずかな減少・小児におけるワクチン反応の低下・妊婦における高血圧のリスクの増加・腎臓がんまたは精巣がんのリスクの増加などが知られています。現在、4700以上の異なるPFAS類がほとんどすべての産業分野と多くの消費者製品で使用されていて、PFASの環境への放出は、多くの国で大規模な汚染を引き起こしています。
日本においては、厚生労働省が広く存在している2つのPFAS化学物質であるペルフルオロオクタン酸PFOA及びペルフルオロオクタンスルホン酸PFOSを水道水の水質管理目標設定項目に位置づけ、暫定目標値としてPFOSおよびPFOAの合計値50ng/Lを設定しています。これに対して、東京都の多摩地域で水道水に使われる井戸水など国内各地の河川や井戸水から高濃度でPFASが検出されています。また、全国の在日米軍基地周辺の水道水からもPFASが検出されていますが、米軍基地での消火訓練時の流出が原因と指摘されています。長野市においても犀川沿いの川合新田地区で暫定目標値越えがあることがわかり、一部水源で取水を止めているところです。
今回、淡水生物学研究所の淡水魚の飼育・実験に用いている井戸水を2023年6月20日に採集してPFOSおよびPFOAの濃度測定を行い(水温16.7°C)、下限値の5ng/L未満という低い値が得られました。国の暫定目標値が50ng/L以下であり、上田市小牧周辺でのPFASによる水質汚染の可能性は低いことが明らかとなりました。