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【長野大学プレスリリース】ネオニコチノイド系農薬の河川微生物群集への影響

IFB

令和7年3月に、長野大学淡水生物学研究所の研究成果として、ネオニコチノイド系農薬の河川微生物群集への影響についての学術論文が、国際学術誌Aquatic Toxicologyに掲載されました(https://www.sciencedirect.com/journal/aquatic-toxicology)。

研究のポイント

  1. EcoPlates法で初めて農薬ジノテフランの淡水バイオフィルム(微生物群集)への影響を測定
  2. 農薬への暴露は、予想に反し、平均的には淡水バイオフィルム(微生物群集)の代謝活性を増加させた
  3. 中でもプトレシンの代謝活性が最も顕著に増加した

研究の概要

ネオニコチノイド系農薬は有用であると同時に野生生物群集への悪影響が懸念されています。この研究は、EcoPlates法によって、一般的なネオニコチノイド系農薬であるジノテフランが淡水生物(微生物群集)に与える影響を生態毒性学的に評価したものです。EcoPlates法では様々な炭素源について微生物の代謝活性を測定することができます。実験では、河川の川底の岩の表面に生息する微生物群集(淡水バイオフィルム)を採集し、この微生物群集に対してジノテフランがどのような撹乱を引き起こすのか、ジノテフランの濃度を変えて14日間暴露しました。面白いことに、0.100 mg l-1のジノテフラン濃度は、微生物群集の炭素源の代謝を平均的にはむしろ促進することがわかりました。また、代謝活性は炭素源の種類によって異なっていました。代謝率は、プトレシン(+4673 %)、セリン(+376 %)、ガラクツロン酸(+206 %)、ピルビン酸メチルエステル(+177 %)、ガンマアミノ酪酸(+113 %)で増加し、アルギニン(-59 %)、アスパラギン(-26 %)、マンニトール(-21 %)で減少しました。これは、EcoPlatesを用いて、現実的な環境濃度のジノテフランが淡水のバイオフィルムに及ぼす影響を調べた最初の研究です。さらなる研究によってその機序が解明されることが望まれます。

用語解説

謝辞

この研究は、国土交通省河川砂防技術研究開発公募地域課題分野(河川生態)「河川における生息地連続性の重要性 — 河川生態系への影響評価および保全方策」(研究代表:箱山 洋)の研究助成を受けたものです。

論文情報

掲載誌:Aquatic Toxicology タイトル:Community-level effects of a neonicotinoid pesticide on the metabolism of freshwater microorganisms 著者名:Alessandra CERA, Sakie KODAMA, Leanne K. FAULKS, and Hiroshi HAKOYAMA (Alessandra CERA, 児玉紗希江, Leanne K. FAULKS, 箱山 洋) DOI:https://doi.org/10.1016/j.aquatox.2025.107311

問い合わせ先

長野大学淡水生物学研究所 ifb@nagano.ac.jp TEL: 0268-22-0594 FAX: 0268-22-0544 児玉紗希江・箱山 洋

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