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ウナギユニット

Hiroshi Hakoyama

ウナギユニット

glasseel2 水産庁の水産資源調査・評価推進委託事業(委託事業)および国際水産資源変動メカニズム等解析事業(補助事業)のうちニホンウナギ・ウナギ類を対象とした資源評価・管理に関する研究を行うユニットがウナギユニットです。ウナギユニットでは淡水生物学研究所の箱山 洋教授をリーダーとして39の試験研究機関が協力して2019年度からプロジェクト研究を進めています。

ニホンウナギは、2013年には環境省が絶滅危惧IB類に、2014年にはIUCNが絶滅危惧IB類に指定するなど絶滅の懸念が示されています。近年のニホンウナギの漁獲量減少は国際的な問題であり、IUCNレッドリストの見直し(2019年に見直し、2017年アジアプレアセス、2016年日本プレアセス)、CITESでの検討、水産庁が進める国内管理施策や国際的な資源管理体制の構築(ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議および非公式協議のもとでのウナギ科学者会議やウナギタスクチーム)など様々な行政問題への科学的な研究貢献が求められています。

このような背景から、ウナギユニットでは漁獲情報収集、調査、数理統計解析を通じて、ニホンウナギ資源の現状を評価・把握し、資源の回復と持続的利用を確保するための適切な管理方策・調査・数理モデリング・統計解析の高度化を検討し、積極的に成果を公表・活用することで行政貢献を行なっています。

具体的には、次の4課題について研究を進めています:

課題1. 資源評価・管理:資源動向分析、池入れ量提言および絶滅リスク評価

ウナギ漁業・養鰻業の継続をしつつ、資源回復することで、ウナギ資源の持続的利用を確保する必要がある。近年のニホンウナギの漁獲量減少は国際的な問題であり、IUCNレッドリストの見直し、CITES動物委員会での規制検討、水産庁が進める国内管理施策や国際的な資源管理体制の構築など様々な行政問題への水産資源学的な研究による貢献が求められている。これらの問題に最も重要な役割を果たすのが、数理モデルを枠組みの中心にした、ウナギ資源の動向把握・絶滅リスク評価・池入れ管理に関する研究・開発であり長野大学が研究を進める。ウナギ資源の動向把握については、シラスウナギ漁況と海面のウナギ漁況のモニタリング・シラスウナギ調査を主要な情報源とし、定性的な漁期外情報としてシラスウナギ調査を行う。特にシラスウナギ漁況についてはシラス採捕県が集まるデータの共有・公開に関する会議を行う。また、数理・統計モデルについては信頼の置ける資源動態モデルの開発やその統計的解析方法の高度化を行い、漁獲量・課題2の集団遺伝・課題3の衛星タグによる回遊調査(補助事業)をデータとした管理手法の開発と分析、および絶滅リスク評価および資源動向分析などの資源評価を行う。

課題2. 有効集団サイズ推定等の集団遺伝学的解析

漁業によらない資源動向指標としてゲノムから有効集団サイズの推定を行う。有効集団サイズは種内集団の遺伝的多様性の維持に貢献する親の個体数と解釈できるため、資源の遺伝的多様性の指標になる。特に絶滅危惧種では重要な量として求められることが多い。CITESでも漁業以外の資源動向のINDEXを求めており、有効集団サイズはこの要求を満たすと考えられる。シラスおよび黄ウナギのサンプルは、千葉県、静岡県、和歌山県、宮崎県、鹿児島県が採取し、長野大学と水産資源研究所が協力して次世代シーケンサー(NGS)でのシーケンス解析等を行う。また、九大望岡准教授の過去のシラスサンプルなどを用いて過去の有効集団サイズの時系列分析を行い、現在の個体群の健全性を判断する材料とする。Igarashiら(2018)の論文において、ニホンウナギが単一集団から成る(panmixia)とする考え方に対する反論が提示された。Igarashiらの結果が真であれば、本種における有効集団サイズの推定および資源管理単位の考え方の土台を再検討する必要があるため、リシーケンス分析に基づく単一集団仮説の再検証を行う。

課題3. ニホンウナギ用のアルゴス衛星を利用したポップアップ電子タグの改良および調査

tagged_eel ニホンウナギの生育場と産卵場を結び、再生産に寄与する親ウナギの由来(生息場や死滅回遊地域)を特定することが資源の構造を理解するうえで重要である。また、産卵場まで至らない産卵回遊のトラッキングであってもCITES, IUCN, FAO、ウナギの国際非公式協議などで求められているウナギ資源の基礎的な知見の一つとなる。衛星タグを用いた産卵場までのトラッキングは大型のアメリカウナギやヨーロッパウナギでは成功しており、国際的にも有力な手法となっている(Beguer-Pon et al., 2015. Nature Comm., Righton et al., 2016. Sci. Adv.)。しかしながら、体重の小さなニホンウナギにおいては、現在のところ衛星タグでの生育場と産卵場を結ぶ長距離の移動モニタリングは確立しておらず、衛星タグ調査手法の改良および調査による知見の収集と蓄積が現在の課題である。このような背景からウナギ国資補助事業では衛星タグの改良およびそれを用いた調査に関する研究を行う。回遊調査では、ウナギの衛星タグを用いて、複数の生息地での調査を行い海洋の移動データを取得する(長野大学、熊本県、宮崎県、九州大学)。さらに、小型で負担の小さいニホンウナギ用のアルゴスポップアップ衛星タグの改良を行う(信州大学、長野大学)。合わせて、実際の生体へのダミータグ装着実験(短期・長期装着実験)を長野大学の大型水槽等で行い、装着耐性の結果をタグ改良にフィードバックする。また、流体抵抗を減らすためのタグの形状改良に関する数値計算・流水水槽実験等を信州大学が行う。今年度は、さらに信頼性の高い小型で抵抗の小さいタグの改良を目標とするが、最終的には2500km先の産卵場への移動に耐える衛星タグ調査を目指す。

課題4. ウナギタスクチームにおける国際的な研究

二つのタスクチームにおける研究活動を行う。それぞれ、タスクチームの内容は次のとおりである。タスクチーム1:北東アジア地域におけるニホンウナギの資源動向を理解し予測するために、北東アジア地域の科学者間の緊密な関係を構築し、ニホンウナギの長期時系列データの収集・整理を行う(チームリーダー Leanne Faulks)、タスクチーム2:北東アジアおよびその他の地域におけるニホンウナギおよびその他の関連ウナギの河川から産卵場までの移動経路を追跡するための追跡技術に関する情報交換、および追跡データの分析・評価(チームリーダー 箱山 洋)。国資事業においては、外国のタスクチームのメンバーと連携し、国際的な漁獲データの整備、eDNA調査によるウナギ類の分布と現存量調査、東アジアにおける衛星タグを用いたトラッキング調査についての議論・連携を行う。

機関 機関名 担当者
JV 長野大学・淡水生物学研究所 箱山 洋
JV 長野大学・淡水生物学研究所 Leanne Faulks
JV 長野大学・淡水生物学研究所 藤森宏佳
JV 長野大学・淡水生物学研究所 岡本千晶
JV 長野大学・淡水生物学研究所 Ishmerai Galang
JV 信州大学・工学部・機械システム工学科 飯尾昭一郎
JV 九州大学 望岡典隆
JV 東京大学・大気海洋研究所 佐藤克文
JV 東京大学・大気海洋研究所 吉田 誠
JV 千葉県水産総合研究センター内水面水産研究所 馬渕康彦
JV 静岡県水産・海洋技術研究所・浜名湖分場 吉川昌之
JV 和歌山県水産試験場・内水面試験地 田中俊充
JV 徳島県農林水産部・漁業管理調整課 竹内章
JV 和歌山県立自然博物館 揖 善継
JV 岡山県農林水産総合センター水産研究所 小橋啓介
JV 岡山県農林水産総合センター水産研究所 竹本浩之
JV 熊本県水産研究センター・資源研究部 吉村直晃
JV 宮崎県内水面振興センター 林田秀一
JV 宮崎県内水面振興センター 松永鉄也
JV 鹿児島県水産技術開発センター・漁場環境部 塩先尊志
JV 鹿児島県商工労働水産部・水産振興課・漁業調整係 福元亨介
JV 水研機構・資源研究所・ゲノム情報解析G 關野正志
JV 水研機構・資源研究所・ゲノム情報解析G 中道礼一郎
JV 水研機構・資源研究所・資源解析G 秋田鉄也
JV 水研機構・資源研究所・ゲノム情報解析G 山本佑樹
JV 水研機構・資源研究所・広域性資源部 南川真吾
協力 有限会社リトルレオナルド 鈴木道彦
協力 有限会社リトルレオナルド 池田宏一郎
協力 山口ME設計事務所(リトルレオナルド) 山口一夫
協力 宮城県水産林政部・水産業振興課・漁業調整班 永木美智子
協力 茨城県農林水産部漁政課調整・漁船G 今野美紗子
協力 東京都産業労働局・農林水産部・水産課 鵜殿謙二郎
協力 神奈川県水産課・漁業調整・資源管理グループ 中川 拓朗
協力 岐阜県農政部・里川振興課・水産係 神子高弘彪
協力 愛知県水産試験場・内水面漁業研究所 鯉江秀亮
協力 三重県農林水産部・水産資源管理課・漁業調整班 福田 遼
協力 兵庫県農政環境部・農林水産局水産課・漁政班 髙木敏行
協力 広島県農林水産局・水産課・漁業調整グループ 三浦建太郎
協力 愛媛県農林水産部・水産局・水産課 久枝弘幸
協力 香川県農政水産部・水産課・漁業調整グループ 秦 正樹
協力 福岡県農林水産部水産局・水産振興課養殖内水面係 合戸賢利
協力 佐賀県農林水産部・水産課・漁業調整担当 江頭千優
協力 大分県農林水産部・漁業管理課・漁業調整班 野田 誠
協力 熊本県農林水産部・水産振興課・資源栽培班 諸熊孝典
協力 宮崎県農政水産部・漁業管理課・漁業管理担当 横山貴大
協力 長崎県水産部漁業振興課漁業調整班 木村竜太郎
協力 高知県水産振興部・漁業管理課 占部敦史
協力 石川県農林水産部・水産課・企画流通グループ 坂本龍亮
協力 石川県水産総合センター・海洋資源部 四方崇文
協力 山口県農林水産部・水産振興課・生産振興班 森岡理恵子
協力 一般社団法人全日本持続的養鰻機構・東京事務所 吉冨嗣希
協力 よろず水産相談室 afc.masa 宮原正典